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大阪地方裁判所 平成元年(ワ)10497号 判決 1991年7月26日

主文

一  被告の原告らに対する大阪高等裁判所昭和五八年(ネ)第四四五号建物収去土地明渡等請求控訴事件判決に基づく強制執行は、別紙債務名義目録(一)記載の部分を除き、これを許さない。

二  被告の原告らに対する大阪地方裁判所昭和六二年(ワ)第一一二五〇号損害賠償請求事件判決の別紙債務名義目録(二)記載一の部分に基づく強制執行は、同目録記載二の部分を除き、これを許さない。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを一〇分し、その五を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告の大阪高等裁判所昭和五八年(ネ)第四四五号建物収去土地明渡等請求控訴事件判決に基づく強制執行は、これを許さない。

2  被告の大阪地方裁判所昭和六二年(ワ)第一一二五〇号損害賠償請求事件判決中、別紙債務名義目録(二)記載一の部分に基づく強制執行は、これを許さない。

3  訴訟費用は、被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1(一)  被告と中村正次(以下「正次」という。)及び原告中村不動産株式会社(以下「原告会社」という。)との間には大阪高等裁判所昭和五八年(ネ)第四四五号建物収去土地明渡等請求控訴事件(以下「甲事件」という。)における確定判決(口頭弁論終結日は昭和六〇年二月六日。以下「本件高裁判決」という。)がある。

(二)  本件高裁判決は、被告と正次との間の別紙物件目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)の賃貸借契約(建物所有を目的とする。以下「本件賃貸借契約」という。)が昭和五五年三月三一日に期間満了により終了したとして、正次に対し、本件賃貸借契約に基づきその地上にある別紙物件目録(二)記載の各建物(以下「本件各建物」という。)を収去して本件土地を被告に明け渡すこと及び昭和五五年四月一日から右明渡済に至るまで一箇月金二七万六〇〇〇円の割合による賃料相当損害金を被告に支払うことを命じている。

(三)  また、本件高裁判決は、被告の有する本件土地の所有権に基づき、その地上に本件各建物を所有していた原告会社に対し、これを収去して本件土地を被告に明け渡すこと及び昭和五五年四月一日から右明渡済に至るまで一箇月金二七万六〇〇〇円の割合による賃料相当損害金を被告に支払うことを命じている。

(四)  正次は、昭和六一年一一月一三日に死亡し、その妻である原告中村榴並びにその子である原告中村泰雄、原告中村昭博及び原告中村恒善が同人を法定相続したので、本件高裁判決は、現在では、右原告らに対する債務名義となっている。

2(一)  被告と原告らとの間には、大阪地方裁判所昭和六二年(ワ)第一一二五〇号損害賠償請求事件(以下「乙事件」という。)における確定判決(以下「本件地裁判決」という。)がある。

(二)  本件地裁判決は、本件土地の賃料相当損害金について一箇月金二二六万円が相当であるとして、本件高裁判決における一箇月金二七万六〇〇〇円との差額金一九八万四〇〇〇円について、昭和六二年一二月一日から右明渡済に至るまで、原告中村榴に対し、一箇月金九九万二〇〇〇円の割合による金員、原告中村恒善、原告中村泰雄及び原告中村昭博に対し、各自、一箇月金三三万〇六六六円の割合による金員を原告会社と連帯して被告に支払うことを命じ、原告会社に対し、一箇月金一九八万四〇〇〇円の割合による金員を右各原告と連帯して被告に支払うことを命じている。

3(一)  正次の同族会社であった原告会社は、正次から本件土地を建物所有目的で賃借していた(以下、この賃貸借契約を「本件転貸借契約」という。)。

(二)(1)  原告会社は、本件賃貸借契約の終了時点において、本件土地上に本件各建物を所有していた。

(2)  なお、原告会社は、別紙物件目録(二)記載(1)の建物(以下「本件建物(1)」という。)の一部を改造し、別紙物件目録(三)記載の建物部分(以下「D部分」という。)としたが、D部分は、本件建物(1)の一部であった別紙図面(二)表示Eの部分(以下「E部分」という。)及び同図面表示Jの部分(以下「J部分」という。)と一体であって、これらは、本件建物(1)と同一性を保っている。

(三)(1)  原告会社は、平成元年一二月一日に被告に到達した書面により、被告に対し、本件各建物につき買取請求権を行使する旨の意思表示をした。

(2)  (1)の予備的主張

原告会社は、昭和六三年一〇月二八日、乙事件の口頭弁論期日において、被告に対し、本件各建物につき買取請求権を行使する旨の意思表示をした。

4(一)  原告会社は、本件各建物を別紙賃借人一覧表記載のとおり、賃貸していた。

(二)  そこで、原告会社は、平成元年一二月一日、右各賃借人から平成元年一二月一日以降の賃料を受領しても異議はない旨通知することにより、被告に対し指図による占有移転の申入れをした。

(三)  そして、原告会社は、平成元年一二月一日、各賃借人に対し、以後被告のために建物を占有すべき旨及び同月一日以降の賃料は被告に支払うべき旨通知した。

(四)(1)  被告は、本件請求異議訴訟において、原告らに本件各建物を収去して本件土地を明け渡す義務があると主張しているのであるから、その主張は、本件各建物に賃借人がいる以上、本件各建物について指図による占有移転をすることにより本件土地を明け渡すことを求める趣旨を含むものといわなければならない。したがって、被告は、指図による占有移転を承諾したものというべきである。

(2)  原告らは、建物買取請求権を行使した上、同時履行の抗弁権を行使せず、被告に対し指図による占有移転の方法により本件各建物の引渡しの提供をしているのであるから、このような場合には被告に受領義務が認められるべきである。したがって、本件においては、被告の承諾は不要である。

5  平成元年一一月末日までの賃料相当損害金は、支払済である。

6  よって、原告らは、本件高裁判決及び本件地裁判決中の別紙債務名義目録(二)記載一の部分(以下「本件地裁判決の一部」という。)について、執行力の排除を求める。

二  請求の原因に対する認否

1  第1項及び第2項の事実は、認める。

2(一)  第3項(一)の事実は、認める。

(二)(1)  同項(二)(1)の事実は、認める。

(2)  同項(二)(2)の事実は、否認する。原告会社は、昭和五八年ころ、本件建物(1)の一部を取り壊し、本件土地上にこれと同一性のないD部分を新築し、これを所有している。したがって、D部分については買取請求をすることができない。

(三)  同項(三)の事実は、認める。

しかし、本件のように、一筆の土地上に、八棟の建物があるような場合において、その一部について買取請求権を行使することができないときは、他の建物についても買取請求権を行使することができないというべきである。仮に、原則として、個別的に建物買取請求権を行使することが可能であるとしても、本件においては、本件各建物中、D部分が最も主要な建物であるから、このような場合には、本件各建物全部について買取請求権を行使することができないというべきである。

3(一)  第4項(一)の事実は、知らない。

(二)  同項(二)の事実は、そのうち、原告会社が被告に対し本件各建物の賃借人から平成元年一二月一日以降の賃料を受領しても異議はない旨の通知をしたことは、認めるが、これによって、指図による占有移転の申入れがあったことは争う。

(三)  同項(三)の事実は、知らない。被告は、指図による占有移転を承諾していないから、原告会社が賃借人に対して被告のために占有すべき旨の指示をしても、建物を被告に引き渡したことにはならない。

(四)  同項(四)は、争う。

4  第5項の事実は、認める。

5  第6項は、争う。

三  抗弁

1(一)  原告会社は、甲事件において建物買取請求権を行使することができたにもかかわらず、これを行使しなかった。

(二)  したがって、建物買取請求権は、訴訟経済上の理由により、甲事件における本件高裁判決の確定により消滅したというべきである。すなわち、右のような場合に後日買取請求権を行使することが許されるとすれば、先の判決により確定された権利関係に根本的な変動が生じ、確定判決が無意味になる。そのような不当な結果をもたらす建物買取請求権の行使は、訴訟経済という観点からして、許されるべきではない。

2(一)  また、原告会社は、乙事件において一旦建物買取請求権を行使しながら、後にその意思表示及び主張を撤回した。

(二)  したがって、原告会社は、右撤回により建物買取請求権を放棄したものというべきである。

3  原告らは、本件各建物の家賃収入(一箇月合計金一四七万六七五〇円)が本件高裁判決における遅延損害金を上回る間は建物買取請求権を行使しないで本件土地の占有を続け、本件地裁判決により賃料相当損害金が家賃収入を上回ることになると、一旦撤回した建物買取請求権を再び行使して本件訴訟を提起したものである。これは、被告に多大な経済的負担を強いるものであり、社会通念上著しく不当であって、権利の濫用に当たる。

四  抗弁に対する認否

1(一)  第1項(一)の事実は、認める。

(二)  同項(二)は、争う。土地賃貸借の終了を原因とする建物収去土地明渡請求訴訟の口頭弁論終結時までに行使されなければ、建物買取請求権が消滅するとすべき理由はない。まして、原告会社及び正次は、甲事件においては一審で勝訴していたのであるから、控訴審において敗訴を前提とした上建物買取請求権を行使しなければならないというのは、賃借人に無理を強いるものである。

2(一)  第2項(一)の事実は、認める。ただし、被告は、主張の撤回に異議がない旨陳述した。

(二)  同項(二)は、争う。主張の撤回であって、権利放棄には当たらない。

3  第3項は、権利の濫用に当たることを争う。乙事件において原告らが主張を撤回したのは、これが抗弁として成り立つためには、被告に対して本件各建物の間接占有を移転する必要があったところ、これを実行すると建物賃借人との間で紛争が生ずるおそれがあったからである。原告らは、本件土地を明け渡すため、被告に対し、本件各建物の賃借人に建物退去土地明渡しの訴えを提起するよう懇請したが、被告は、これを受け入れなかった。本件地裁判決が確定したことにより賃料相当損害金が増額され、また、被告に本件高裁判決の執行により本件土地の明渡しを受ける意思がないことが明らかとなった以上、原告らとしては、建物買取請求権を行使することにより本件土地の明渡しをする以外に問題を解決する方法がない。

第三  証拠(省略)

理由

一  請求の原因第1項の事実(本件高裁判決の存在)及び第2項の事実(本件地裁判決の存在)は、当事者間に争いがない。

二  次に請求の原因第3項(建物買取請求権の行使)について判断する。

1  (一)の事実は、当事者間に争いがない。

2  また、(二)(1)の事実も当事者間に争いがない。

ところで、被告は、本件買取請求権は、甲事件において行使することが可能であったのであるから、本件高裁判決に対する請求異議の事由とはならない旨主張するが、建物買取請求権は、借地人に土地の明渡義務を免れさせるために認められているものではなく、借地人保護という見地からその投下資本の回収方法として特別に認められているものであること、建物買取請求権の行使は、執行方法上問題となる建物の所有権について変動を生じさせるが、本来の土地明渡義務自体について変動を生じさせる性質のものではないことからして、甲事件の口頭弁論終結後に行使されている以上、甲事件において行使することができたことを理由として、これが請求異議の事由となることを否定することはできないというべきである。

3  次に、成立に争いのない甲第一、第一六号証、第一七号証の一、二、乙第四号証、原告中村榴本人の尋問の結果と弁論の全趣旨によると、原告会社は、昭和五七年一二月、E部分及びJ部分を残して本件建物(1)の全部を取り壊し、新たに基礎工事をした上、昭和五八年中にD部分を完成させたこと、D部分、E部分、J部分は四囲を障壁で囲まれ独立の出入口を有していること、面積的にはD部分が最大であること、原告会社は、昭和五八年二月にD部分につき新築のための建築確認を受けていること、以上の事実を認めることができ、これらの事実によると、D部分は、本件建物(1)とは別個の建物というべきである。

4  (三)(1)の事実(本件各建物に対するる建物買取請求権の行使)は、当事者間に争いはない。

しかし、右に判示したように、D部分は、本件建物(1)とは別個の建物であり、かつ、本件賃貸借契約終了後に建築されたものであるから、D部分について買取請求をしても、その効果は生じないことになる。他方、E部分及びJ部分は、現在はそれぞれ独立した建物となっているが、本件賃貸借契約の終了時点では本件建物(1)の一部であったのであるから、一個の建物として買取請求の対象となり得ることになる。

なお、被告は、一筆の土地の上に複数の建物がある場合において、その一部(D部分)について買取請求権を行使することができないときは、全部について買取請求権を行使することができない旨主張する。しかし、被告は、原告らに対しD部分を収去してその敷地部分を明け渡すことを求めることができるのであるから(D部分に賃借人がいる場合には、当該賃借人に対しては、建物退去土地明渡しを求める必要がある。)、D部分が買取請求の対象とならないことによって被告に不利益な結果が生じることはない。したがって、D部分が買取請求の対象とならないことは、D部分以外の建物について買取請求権を否定すべき理由とはならない。

三  次に、請求の原因第4項につき判断する。

1  まず、建物買取請求権の行使により、その対象となった建物の所有権は当然に被告に移転するから、本件土地を明け渡すためには、原告らとしては、建物を明け渡して本件土地の占有を被告に移転すれば足りるところ、本件においては、原告会社が本件土地を建物の敷地としてのみ使用しており、かつ、その建物が賃貸の用に供されていたのであるから、本件土地の明渡しの方法としては、原告会社において、指図による占有移転の方法により、建物の間接占有を被告に移転すれば足りるというべきである。

そこで、この点につき検討するに、原告中村榴本人の尋問の結果により成立の認められる甲第一三号証の一ないし四一、第一四号証の一ないし二五、原告中村榴本人の尋問の結果と弁論の全趣旨によると、原告会社が本件各建物を別紙賃借人一覧表記載のとおり賃貸していたこと、原告会社が、平成元年一二月一日に到達した書面により、被告に対し右各賃借人から平成元年一二月一日以降の賃料を受領しても異議はない旨通知したこと、原告会社が、平成元年一二月、各賃借人に対し、被告に建物を譲渡したので同月一日以降の賃料を被告に支払うべき旨通知したこと、以上の事実を認めることができる。

そして、右に認定した被告において賃料を受領しても異議はない旨の通知は、建物買取請求権の行使と同時にされていることからして、各賃貸部分の間接占有を被告に移転する旨の表示(指図による占有移転を行う旨の表示)と解することができ、また、被告に建物を譲渡した旨及び被告に賃料を支払うべき旨の各賃借人に対する通知は被告のために各賃貸部分を占有すべき旨の各賃借人に対する指示と解することができる。

しかし、各賃借人への通知の時期については、右各証拠によるも、遅くとも平成元年一二月末日までに完了したと認めることはできるが、それ以前の特定の日までに完了したことを認めるに足りる証拠はない。

2  ところで、被告は、指図による占有の移転を承諾しない旨主張するが、弁論の全趣旨によると、被告は甲事件の訴え提起以来今日まで原告らに対し一貫して本件土地の明渡しを求めていることが認められるところ、前示のように原告会社は建物の間接占有を移転すれば本件土地の明渡しをしたことになるのであるから、このような場合には、原告会社において指図による建物の占有移転を行う旨被告に表示すれば、両者の間に指図による占有移転を行うことについて合意が成立したものというべきである。

したがって、前示のように、平成元年一二月一日原告会社が被告に対して指図による占有移転を行う旨の表示をしたことにより、同日、両者の間で各建物について指図による占有の移転について合意が成立したものということができる。

3  そうすると、本件においては、原告らが平成元年一二月三一日被告に対して本件土地(D部分の敷地を除く。)を明け渡したものとして取り扱うべきことになる。

四  そこで、進んで、抗弁につき判断する。

1  抗弁第1項(一)の事実(原告会社が、甲事件において建物買取請求権を行使することができたにもかかわらず、これを行使しなかったこと)は、当事者間に争いがない。しかし、建物買取請求権は、借地人の保護を図るため、法が特に認めた権利であって、その権利の行使は、借地人の自由な決定に委ねられているものであるから、原告会社が甲事件において権利の行使をしなかったとしても、訴訟経済上の理由といったことにより、建物買取請求権を喪失したものとすることはできない。

2  次に、抗弁第2項(一)の事実(原告会社が乙事件において一旦建物買取請求権を行使しながら、後にその意思表示及び主張を撤回したこと)は、当事者間に争いがない。しかし、乙事件における主張の撤回や意思表示の撤回のみでは建物買取請求権の放棄があったとすることはできず、他に、原告会社が建物買取請求権を放棄したとすべき事情を認めるに足りる証拠はない。

3  さらに、原告会社が甲事件において建物買取請求権を行使せず、また、乙事件において一旦建物買取請求権を行使しながら後にその意思表示及び主張を撤回をしたことにより、被告が、原告会社において建物買取請求権を行使しないものと信頼し、それを前提として建物賃借人に建物退去土地明渡しの訴えを提起する等の措置を採ったことを認めるに足りる証拠のない本件においては、現時点において原告らに建物買取請求権の行使を認めても、被告に特段の不利益が生ずるとはいえない。したがって、本件買取請求権の行使をもって、権利の濫用に当たるとすることはできない。

五  次に、本件各債務名義の消滅範囲について判断する。

1(一)  平成元年一一月末日までの本件土地の賃料相当損害金が支払済であることは当事者間に争いはない。

(二)  しかし、前示のように、原告らは平成元年一二月三一日に本件土地のうちD部分の敷地以外の部分の明渡しをしたことになるから、原告らは同月一日から同月三一日までの賃料相当損害金については、なお、その支払義務を負担していることになる。また、D部分の敷地部分を明け渡していない以上、原告らは、平成二年一月一日以降も、その明渡済に至るまでD部分の敷地部分について賃料相当損害金を支払うべき義務を負担していることになる。そして、甲第一七号証の一、二と弁論の全趣旨によると、D部分の敷地部分は本件土地の三割に相当することが認められるので、特段の事情の認められない本件においては、D部分の敷地部分を明け渡さないことによる賃料相当損害金の額は、各債務名義において認められている額の三割に相当する額と認めるのが相当である。

2  したがって、本件高裁判決については、次に掲げる部分を除き、執行力を排除すべきことになる。

(一)  原告会社及び正次は、被告に対し、本件建物(1)(E部分及びJ部分を除く。)を収去してD部分の敷地部分の明渡しをせよと命じている部分

(二)  原告会社及び正次は、被告に対し、各自、平成元年一二月一日から同月三一日まで一箇月金二七万六〇〇〇円の割合による金員の支払をせよと命じている部分

(三)  原告会社及び正次は、被告に対し、各自、平成二年一月一日から右敷地部分の明渡済に至るまで、一箇月金八万二八〇〇円の割合による金員の支払をせよと命じている部分

3  また、本件地裁判決の一部については、次に掲げる部分を除き、執行力を排除すべきことになる。

(一)  平成元年一二月一日から同月三一日まで、被告に対し、原告中村榴は、一箇月金九九万二〇〇〇円の割合による金員、原告中村泰雄、原告中村昭博及び原告中村恒善は、各自、一箇月金三三万〇六六六円の割合による金員、原告会社は一箇月金一九八万四〇〇〇円の割合による金員の支払をせよと命じている部分

(二)  平成二年一月一日からD部分の敷地部分の明渡済に至るまで、被告に対し、原告中村榴は、一箇月金二九万七六〇〇円の割合による金員、原告中村泰雄、原告中村昭博及び原告中村恒善は、各自、一箇月金九万九一九九円の割合による金員、原告会社は一箇月金五九万五二〇〇円の割合による金員の支払をせよと命じている部分

六  よって、原告らの請求は、本件高裁判決中、別紙債務名義目録(一)記載の部分以外の部分に基づく強制執行の排除を求め、本件地裁判決の一部中、別紙債務名義目録(二)記載二の部分以外の部分に基づく強制執行の排除を求める限度で理由があるから、右の限度でこれを認容し、その余は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(別紙)

物件目録(一)

大阪市西成区千本南二丁目二六番

宅地  一五八六・一四平方メートル

のうち、別紙図面(一)の斜線部分一四五〇・六一平方メートル

物件目録(二)

大阪市西成区千本南二丁目二六番地所在

(1) 家屋番号二六番の一

木造瓦葺二階建店舗

床面積  一階  四〇一・一五平方メートル

二階  二六七・七六平方メートル

付属建物 木造瓦葺平家建便所 一棟

床面積        七・四三平方メートル

(2) 家屋番号二六番の二

木造瓦葺平家建居宅 一棟

床面積       八五・四二平方メートル

(3) 家屋番号二六番の三

木造瓦葺平家建居宅 一棟

床面積       七五・九〇平方メートル

付属建物 木造瓦葺平家建居宅 一棟

床面積       七八・七四平方メートル

(4) 家屋番号二六番五

木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積  一階   五〇・二四平方メートル

二階   五〇・二四平方メートル

(5) 家屋番号二六番六

木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積  一階   五四・五四平方メートル

二階   五二・〇六平方メートル

(6) 家屋番号二六番七

木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積  一階   五六・八五平方メートル

二階   七五・八六平方メートル

(7) 家屋番号二六番八

木造瓦葺平家建居宅 一棟

床面積       一七・三五平方メートル

(8) 家屋番号二六番九

木造瓦葺平家建居宅 一棟

床面積       一六・五二平方メートル

物件目録(三)

大阪市西成区千本南二丁目二六番地所在

木造二階建共同住宅 一棟

床面積

一階  二三八・六八平方メートル

二階  二三八・六八平方メートル

未登記(別紙図面(二)表示Dの部分)

債務名義目録(一)

大阪高等裁判所昭和五八年(ネ)第四四五号建物収去土地明渡等請求控訴事件判決関係

(当事者の表示は、右事件における表示と同じである。)

一 被控訴人らは、控訴人に対し、別紙物件目録(二)記載(1)の建物(別紙図面(二)表示Eの部分及び同Jの部分を除く。)を収去して、別紙物件目録(一)記載の土地中、別紙物件目録(三)記載の建物(別紙図面(二)表示Dの部分)の敷地部分を明け渡せ。

二 被控訴人らは、控訴人に対し、各自、平成元年一二月一日から同月三一日まで一箇月金二七万六〇〇〇円の割合による金員を支払え。

三 被控訴人らは、控訴人に対し、各自、平成二年一月一日から右明渡済に至るまで、一箇月金八万二八〇〇円の割合による金員を支払え。

債務名義目録(二)

大阪地方裁判所昭和六二年(ワ)第一一二五〇号損害賠償請求事件判決関係

(当事者の表示は、右事件における表示と同じである。)

一 請求部分

1 原告に対し、平成元年一二月一日から別紙物件目録(一)記載の土地の明渡済に至るまで、被告中村榴は、一箇月金九九万二〇〇〇円の割合による金員、被告中村泰雄、被告中村昭博及び被告中村恒善は、各自、一箇月金三三万〇六六六円の割合による金員を被告中村不動産株式会社と連帯して支払え。

2 原告に対し、平成元年一二月一日から別紙物件目録(一)記載の土地の明渡済に至るまで、被告中村不動産株式会社は、右各被告と連帯して、一箇月金一九八万四〇〇〇円の割合による金員を支払え。

二 残存部分

1(一) 原告に対し、平成元年一二月一日から同月三一日まで、被告中村榴は一箇月金九九万二〇〇〇円の割合による金員、原告中村泰雄、原告中村昭博及び中村恒善は、各自、一箇月金三三万〇六六六円の割合による金員を被告中村不動産株式会社と連帯して支払え。

(二) 原告に対し、平成元年一二月一日から同月三一日まで、被告中村不動産株式会社は、右各被告と連帯して、一箇月金一九八万四〇〇〇円の割合による金員を支払え。

2(一) 原告に対し、平成二年一月一日から別紙物件目録(一)記載の土地のうち別紙物件目録(三)記載の建物(別紙図面(二)表示Dの部分)の敷地部分の明渡済に至るまで、被告中村榴は、一箇月金二九万七六〇〇円の割合による金員、被告中村泰雄、被告中村昭博及び被告中村恒善は、各自、一箇月金九万九一九九円の割合による金員を被告中村不動産株式会社と連帯して支払え。

(二) 原告に対し、平成二年一月一日から別紙物件目録(一)記載の土地のうち別紙物件目録(三)記載の建物(別紙図面(二)表示Dの部分)の敷地部分の明渡済に至るまで、被告中村不動産株式会社は、右各被告と連帯して、一箇月金五九万五二〇〇円の割合による金員を支払え。

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